風茶房 つのるなか

https://scrapbox.io/kazesabou/「細見綾子・沢木欣一 俳句アーカイブ」よろしくお願いします

かりんの実教材につき盗るべからず 沢木欣一

かりんの実教材につき盗るべからず 沢木欣一

かりんの実教材につき盗るべからず 沢木欣一

昭和50年の俳句で、「藝大構内 二句」の前書があるうちの一句目です。

かりんの実の俳句は欣一にも綾子にも心が動かされるものが複数あり、どの句を掲載するかは、ずっと迷っていました。この句に決めた理由は欣一の自註を読んで驚きがあったからです。

東京芸大(上野のもと美術学校・音楽学校)の構内に見事なかりんの木がある。実の成る頃になると、いつも欲しいと思う。

 『自註現代俳句シリーズ 沢木欣一集』(社団法人俳人協会

当時、欣一は東京芸大音楽学部の教授でした。『欣一俳句鑑賞』細見綾子編(東京新聞出版局)に書かれた岩崎眉乃さんの鑑賞よると、この木は美術学部構内の芸大図書館の前にあって、実をもいでいく学生が相次いだのか、「教材用につき無断で採らないでください 美術学部」の木札が付けられたのだそうです。

学生と同じように欣一もそのかりんの実を採りたかった、という正直な告白を読んで、標語のような表現で可笑しみを誘ったこの俳句には自戒の念も入っていたのかと感心したのです。
「みんなに言いつつ自分に言い聞かせる」ようなことは、よくありますよね。

かりんの実を拾って持ち帰るのは綾子はやっていたようですし、kazeも毎年していました。武蔵野には、落ちたかりんの実の拾える場所がいくつかありまして、今、この家の中にもひとつあります。まだ青さが残っていますが鼻を近付けると桃に似た良い香りがします。

句集で、この句に続く俳句は、

 音楽と灯のかがやきにかりんの実 沢木欣一