風茶房 つのるなか

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紫の羽根をたたみてしじみ蝶 細見綾子

紫の羽根をたたみてしじみ蝶 細見綾子

紫の羽根をたたみてしじみ蝶 細見綾子

平成5年の俳句です。

しじみ蝶は「蝶」と一括りにされて春の季語になっていることもありますが、4月から11月頃まで見られる蝶で、実感としては秋によく見かけるように思います。「細見綾子全句集」(角川学芸出版)では秋の季語に分類されていて、これは綾子のしじみ蝶の俳句は秋に詠まれたものが多いからかもしれません。

この俳句も秋に詠まれており、写真は昨年の今頃に撮りました。
写真の蝶はヤマトシジミか?ルリシジミか?どちらかだと思います。

しじみ蝶は種類が多く翅色も様々です。綾子は随筆『武蔵野歳時記』(東京新聞出版局)の「蜆蝶」の項に、「外側はうすねずみ色で、たたんだ羽を開くと内側は空の色に似た紫色。この二つの色の対比が妙である」と書いています。この文章からはヤマトシジミが想像されます。綾子は秋に蚊帳しまう頃、庭にたくさん現れる、この小さな蝶に愛着を持っていました。

タイトル句は後年に詠まれていて、ヤマトシジミより外側は白く、内側はより青紫のルリシジミを詠んだ可能性もあります。
どちらの蝶でも外側内側、両方の色を見たいという気持ちになります。

しじみ蝶は身近な蝶ですので綾子は何度も俳句に詠みましたが、その特徴を興味深く見つめ、あるがままの姿に感動する心を生涯持ち続けました。
この句を詠んだときの綾子は86歳です。