平成9年の俳句です。
9月6日に妻・綾子が亡くなり、間もない頃に詠まれています。
私が断腸花(だんちょうか)を知ったのは数年前で、秋海棠の別名と聞いたときは意外に思いました。断腸という言葉の強さから、この可愛い花が連想できなかったのです。
欣一は昭和17年、昭和60年、平成5年などにもこの季語で詠んでいますが、その時は「秋海棠」を使いました。全句集を見ると平成9年に詠んだ俳句、ふたつだけに「断腸花」を使っています。タイトル句より先に詠まれたもうひとつの句は、
役立たぬ夫を許せよ断腸花 沢木欣一(平成9年7月作)
こちらは綾子が生死の境目にいたときに詠まれています。まさに魂の叫びの俳句です。
一方、タイトル句は穏やかな美しい情景が浮かびますが、季語が欣一の思いを伝えています。
「断腸」― はらわたがちぎれるほど、悲しくつらいこと。