昭和61年の俳句で、「竹生島 十六句」の前書があるうちの一句です。
琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)、まず、この島のことを知ろうと調べてみました。
沖合約6kmに浮かぶ周囲2kmあまりの小島で、宝厳寺と都久夫須麻神社が祀られています。宝厳寺の本尊は弁才天と千手観音。弁才天は安芸の宮島、相模の江島とともに日本三弁天に数えられています。また、中世以来西国三十三所観音霊場の三十番札所として多くの参詣客で賑わっています。
宝厳寺の唐門は秀吉の大坂城の唯一の遺構と伝わり、都久夫須麻神社の本殿とともに国宝に指定されています。
近年は琵琶湖第一のパワースポットとして注目を集めています。「深緑竹生島の沈影」として琵琶湖八景の一つ。
え~~と、書いてあることが理解しにくいです。参拝巡りに行くところですか?
その答えは欣一の著書にありました。
竹生島は(中略)俗なところという先入観にとらわれて今まで行かないでいた。(中略)一般に有名になったのは謡曲「竹生島」によってであろう。(中略)
謡曲に「緑樹影沈んで、魚木にのぼる風情」とある風光が今も変わらずに残っているのがうれしい。
竹生島は水に浮かぶエメラルドの宝島である。そして、この島に来ると日本人の宗教意識の縮図というべき実態をありありと見ることが出来るのが面白い。
(中略)神と観音と弁財天三つが分ちがたく結ばれ、千余年にわたって庶民信仰を集めて来たこと、いわゆる神仏習合の鮮やかな見本が現存しているのである。神仏分離の野蛮な明治政府の非文化的政策がこの島に及ばなかったことは幸いであった。―『俳句の基本』沢木欣一(東京新聞出版局)より
まさに、欣一が16句の俳句で詠ったのは、多彩な宗教と深い自然との融合でした。
この俳句では蜥蜴の幼体の特徴である尾の鮮やかな色が活きています。青から紫へのグラデーションは神の領域で創り出したように感じます。
写真は東京で撮影しており、ヒガシニホントカゲの幼体です。
一方、欣一が俳句に詠んだ蜥蜴はニホントカゲか、ヒガシニホントカゲか、そのどちらかの判断は難しいです。
ヒガシニホントカゲは2012年に遺伝子レベルの検討でニホントカゲと別種扱いになりましたが、それまでは同種とみなされていました。現在は大雑把に言うと、東日本にいるのはヒガシニホントカゲ、西日本にいるのはニホントカゲ、とされています。滋賀県は分布の境目なので確認のため、琵琶湖に生息するトカゲは何なのかを調べてみました。個人的な興味からです。
インターネットではわからず、現地の公的機関に問い合わせました。その結果ですが、公式に竹生島(琵琶湖エリア)のトカゲを調べたことはなく、ニホントカゲか、ヒガシニホントカゲか、どちらが生息しているのかは不明だそうです。
実際のところ、両者を見た目で判断するのは難しいのです。身近な詳しい人に聞いたところ、頭部がちょっと違うのですが、違うと示した写真を見て、どこが違うのかわからなかったとのことでした。
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