昭和30年の俳句で、「正月、大阪誓願寺に詣で 七句」の前書があるうちの一句です。
大阪誓願寺は井原西鶴の墓があることで知られています。
単独での解釈は難しいですが、七句全部を鑑賞して、私でもぼんやりと見えてくるものがありましたので七句を記します。
西鶴伏眼瓦礫に水仙灯る如
水仙うなづき廃墟に人間信ずる眼
樒の実割れば紫指に沁み
墓隣りチヤリンチヤランと凍ての筬
凧手繰る墓の背後の市街より
冬の水人間臭の棕梠のもと
大阪誓願寺は空襲で焼け、昭和39年に本堂を再建したそうです。
欣一が訪ねた昭和30年では、荒れた状態だったのでしょう。
欣一は『自註現代俳句シリーズ 沢木欣一集』で、7句目の「冬の水…」の句の解説を、次のように書きました。「大阪の誓願寺、西鶴の墓に詣でた。墓は戦災に焼けただれていた。境内の棕梠を生まぐさく感じた。」
廃墟も瓦礫も、現在の大阪誓願寺では見ることが出来ませんが、境内に水仙の花が咲いているらしいことはネットの検索でわかりました。